出典:Amazon Prime
こんにちは、いとまさです^^
先日「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」という映画を観たのですが、いろいろ考えさせられる、良い映画でした。
公開日 | 2011年 |
出演者 | トム・ハンクス (父:トーマス) サンドラ・ブロック (母:リンダ) トーマス・ホーン (主人公:オスカー) |
で、映画を観終わった後、いつものように色んな人のレビューとか、考察を見てたんですが、その時、あることに気付きました。
それが、
「タイトルの意味を安直に捉えて、映画のメインテーマを母親の愛情だと思ってる人が多い!!」
と、いうことです。
たしかに、ラストのプチどんでん返しを示唆しているかのようなタイトルですし、そう思ってしまうのも自然ですよね。
でも、この「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」ってタイトルは、あくまで邦題で、
オリジナルのタイトルは「extremely loud & incredibly close」です。
このオリジナルのタイトルを知った上で映画を観ると、タイトルに込められた別の意味や、この映画の本当のテーマを読み取ることができます。
というわけで、今回、オリジナルのタイトルを元に、
映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」のタイトルの意味やテーマを考察し、この記事にまとめました。
映画の「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」を観たけど、タイトルの意味って、結局お母さんのことだよね?
てことは、あの映画のメインテーマって母親の愛情か。
と思っている人は、この記事を読むことで、この映画に対する捉え方が変わるかもしれません。
ぜひ、最後まで読んで、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」というタイトルに込められた意味や、映画のテーマを知ってください^^
(あくまで僕の考察ですが。)
・映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」のテーマ
・タイトル「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」の意味
映画のテーマは喪失からの立ち直り。+αで母親の愛
出典:「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
まず、この映画の1番のテーマは、母親の愛情ではなく、”喪失からの立ち直り” です。
この映画の主人公オスカーは、9.11テロ事件という理不尽な出来事によって、最愛の父を亡くしています。
そして、”最後の電話に出なかった”という後悔もあり、父の死から立ち直ることができていません。
しかし、父の遺した鍵に合う鍵穴を探す過程で多くの人に出会い、また、その人達も辛い過去や問題を抱えながらも、強く生きていることを知ることになります。
このことが、オスカーの心に変化を与えます。
この心の変化により、最終的には、誰にも話せなかった、自分の辛い過去の過ちについても打ち明け・向き合うことで、父の死を乗り越えます。
これが、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」のおおまかなストーリーです。
辛い過去の出来事に囚われていたオスカーは世界を見て、自分以外にも悩みや問題を抱えている人の存在を知り、また、多くの人の助けによって、喪失から立ち直ります。
合わせて、オスカーの母親も祖父も、夫/息子の死がきっかけとなり、オスカーと向き合い、その絆を深めて、強く生きていきます。
このように、この映画に出てくる人(残された人)は、大切なものを失っても、その喪失を乗り越えて、強く前に進んでいく姿を示します。
そして、この ”喪失からの立ち直り” こそが、この映画の1番のテーマです。
そして、そこに+αとして、オスカーの行動を見守り続けていたという、母親の愛情も含まれていると思います。
そう、+αとして!
しかし、この+αとしての母親の愛情が映画のメインのテーマだと、多くの人に思われており、その理由は、
① 母親がずっと見守り続けたという事実が、映画のオチ(=どんでん返し)に使われていること
② 邦題の ”ありえないほど近い” が、母親を示唆していること
の、2つのだと思います。
特に②の邦題!!
タイトルは映画にとって、非常に重要なものです。
そのタイトルが母親について言及するのであれば、自然と映画のテーマ自体もそうであると思ってしまいます。
この ”ありえないほど近い” は、オリジナルのタイトル ”incredibly close” を翻訳したものです。
でも、”close”って ”近い” って意味だけでじゃないですよね?
”close” には、複数の意味がある
邦題の ”ありえないほど近い” が最後のオチでもある、ずっと見守ってきた母親のことを表しているのは間違いないでしょう。
しかし、この邦題は、オリジナルの ”incredibly close” を翻訳したものであり、この ”close” には、他にも意味があります。
closeの意味
・ごく近い、接近した(形容詞)
・閉ざされた(形容詞)
・閉じる、塞ぐ(動詞)
など
この ”close” の意味をどう捉えるかによって、タイトルの意味が変わってきます。
”近い” 存在は、母親
出典:「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
この ”close” を、”近い” と訳したときに、タイトルが意味するのは、オスカーの母親でしょう。
オスカーが気付かなかっただけで、ずっと見守ってくれていた母親。
その存在は、”ありえないほど近かった” ってわけですね。
また、”近かった” のは、鍵穴のありかという考察もあります。
たしかに、結局のところ、父の残した鍵の合う鍵穴は、1番はじめに訪ねたブラックさんの元夫の貸し倉庫でした。
どちらとも、納得のいく考察です。
でも、それだと、タイトルの ”ものすごくうるさくて” は、何を表しているんでしょう?
オスカーはアスペルガー症候群の疑いがあり、電車や飛行機、行き交う人達の音さえも、彼にとってはうるさい騒音です。
しかし、”ものすごくうるさい” が表すものが、このオスカーの感覚だとすると、タイトルの「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は、意味がよく分かりません。
このタイトルに込められた本当の意味は、”close” を近いではなく、”閉ざされた” と訳することで見えてきます。
”閉ざされている” のは、父親の口
出典:「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
”close” を ”閉ざされた” と考えたとき、閉ざされているのは、死んだ父親の口です。
最愛の父親は、9.11テロの犠牲となり、二度とオスカーに話しかけることはありません。
しかし、オスカーは、この会うことも話すこともできない父親の声を、テープを再生することで、何度も何度も聞いています。
この父親の声は、オスカーにとって懐かしく、良い記憶を思い出させてくれるものでした。
しかし一方で、”電話に出れなかった自分の罪悪感や、後悔を刺激するもの” でもあったでしょう。
映画の後半、本来の鍵の持ち主であるブラック氏に全てを打ち明けるときに、この罪悪感や後悔を打ち明けます。
出典:「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
このような描写から、父親の声はオスカーにとって、自分を執拗に責める ”ものすごくうるさい” ものでもあった、と考えられます。
”loud” には、”うるさい” の他にも、”執拗(しつよう)な” という意味もあります。
このように、オスカーの罪悪感を執拗に刺激する”うるさい”声ですが、その声の主は死んで”口を閉ざして”おり、話すことはありません。
もちろん、オスカーが必死になって探している鍵穴に対しても、何一つ助言などありません。
(当たり前ですが。)
つまり、この父親の声は、自分の罪悪感を刺激する ”ものすごくうるさいもの(extremely loud)” なのに、
その声の主である父の口は ”驚くほど閉ざされている(incredibly close)” という【矛盾】が、そこにはあります。
そして、この【矛盾】が表しているものが、オスカーが乗り越えるべき父親の死であり、この映画の1番のテーマ「喪失からの立ち直り」です。
また、この【矛盾】というワードが、この映画において非常に重要なポイントです。
作中で、オスカーは
「パパとよく”矛盾語合戦”をやった」
と、言及していることからも、【矛盾】がこの映画において、父親を連想させるものだと分かります。
出典:「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
この【矛盾】が父の死を表しているからこそ、父が残した鍵をめぐる旅も「extremely loud & incredibly close」という矛盾した名前の調査結果で締めくくったのでしょう。
(これが、父の死を乗り越えて、次に進んだことを示していると思います。)
出典:「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
この【矛盾】という点を考慮すると、やっぱりタイトルの ”close” は、”近く” ではなく、”閉ざされた” と考えるべきだと思います。
”近く” と捉えると、近くでうるさいのは当たり前で、矛盾してないですからね。
矛盾したタイトルが、父の死に加え、母の愛を意味してる
出典:Amazon Prime
このように、英題も考慮して、この映画の矛盾したタイトルが示すものは、父の死であり、オスカーが乗り越えたもの(→喪失からの立ち直り)です。
しかし、これを乗り越えたのはオスカー1人の力ではありません。
旅先で出会った人達、調査を一緒にしてくれた祖父がオスカーを支えてくれました。
そしてもちろん、ずっと近く(=incredibly close)で見守り続けてくれた母親もです。
ここまでのことを踏まえて考えると、オリジナルのタイトル「extremely loud & incredibly close」が、英語ならではの上手なタイトルだと気付くと思います。
【矛盾】でメインのストーリである父の死(喪失)を表現しつつ、近くで支えてくれていた母親についても言及している、シャレたタイトルになっているからです。
”close” が、”近い”・”閉ざされている” という両方の意味で使われています。
1つの単語が2つの意味を持つ英語だからこそできる、秀逸なタイトルですね。
タイトルのとおり、映画では、オスカーが父の死(喪失)から立ち直るという大きなストーリをメインに、オスカーを近くで支えてくれていた母の愛も描かれています。
このように、「extremely loud & incredibly close」という矛盾したタイトルは、父の死(喪失)を表し、同時に母の愛を表しています。
なので、邦題にするなら、この2つの点を押さえないといけないと思います。
でも結果として、タイトルを翻訳する過程でメインのストーリが薄れて、母の愛が目立ちゃったんですね。(勝手な想像ですが)
そして、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」。
・・個人的には、「ものすごくうるさくて、ありえないほど黙ってる」とかの方が、オリジナルの意味に近いのかな〜って思ったりします。
まとめ
・映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」のテーマは、喪失からの立ち直り
・邦題「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は、オリジナルの英語タイトルと少し離れている
・オリジナルのタイトル「extremely loud & incredibly close」が意味するのは、乗り越えるべき父の死と、近くで支えてくれていた母の愛
以上が、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(=extremely loud & incredibly close)」というタイトルに込められた意味と、映画のテーマです。
全て、僕の考察ではありますが。笑
ここまで読んで納得してくれた方もいれば、
「何言ってんだ?」
と、感じた人もいると思います。
でもこうやって、同じ映画でも、人によって捉え方が違ってくるのも、映画の良いところですよね。
いろんな映画を観て、いろんな考え方を知って、人間としての幅を広げていきたいですね^^